平成30年度の展覧会(2018年4月から2019年3月)

ページID1001232  更新日 2023年4月19日

印刷大きな文字で印刷

怪談えほん原画展+稲生モノノケ録『ぼくはへいたろう』の世界展

会期:平成30年4月21日から6月3日

チラシ:怪談えほん原画展

「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」と同時開催

日本を代表する怪談文芸や怪奇幻想文学のプロフェッショナルたちが書き下ろした文章に、当代実力派画家が絵を描きビジュアル化した絵本シリーズ、岩崎書店刊行の「怪談えほん」の原画展を開催しました。

人気作家5人と実力派画家5人がタッグを組んだ同シリーズは、子どものみならず、大人たちをも恐怖に陥れました。この展覧会では、第1期にあたる、吉田尚令、宇野亞喜良、町田尚子、大畑いくの、軽部武宏が描いた原画をご紹介しました。

また、同時開催として、刈谷市美術館コレクションの中から宇野亞喜良が3パターンで描き分けた『ぼくはへいたろう』の原画を集中展示しました。

江戸時代の《稲生物怪録》から、宇野にインスピレーションを与え、その制作の源となった稲垣足穂の著述等の世界観を比較展示し、ひとつの「怪談」物語をめぐる変容と享受のありようを見つめ、絵本制作の極意に迫りました。

世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦

会期:平成30年4月21日から6月3日

チラシ:平成30年タラブックス展

「怪談えほん原画展+稲生モノノケ録『ぼくはへいたろう』の世界展」と同時開催

南インド・チェンナイの出版社「タラブックス」。1994年に設立され、ギータ・ウォルフとV.ギータという二人のインド人女性が中心となって活動しています。タラブックスといえば美しいハンドメイドの絵本が知られています。インドの民俗画家による絵を、ふっくらとした風合いの紙に版画の技法で印刷し、職人が糸で製本した、工芸品のような本です。インドには各地に多様な民俗芸術の伝統があり、画家たちは住居の壁や床に描いたり、工芸品を作っています。多くのインド人にとっても馴染みの薄かったこうした民俗芸術を出版に結びつけたのは、とても画期的なことでした。

ハンドメイド本以外にも、タラブックスは多彩な本を刊行しています。画家、編集者、デザイナー、印刷職人らによるチームワークから生み出される本は、教育や社会問題をテーマにしたもの、本の形状に特徴があるものなど、とてもユニークです。出版を通してより良い社会をつくりたいという思いのもと、ワークショップなども積極的に開催しています。

この展覧会では、タラブックスの本づくりの全容を伝え、ハンドメイド本を中心に、本や原画、写真やメイキング映像など約300点の資料を通じて、その魅力をたっぷりとご覧いただきました。

図録「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」販売中

常設展第1期 New Collection展 新所蔵作品を初公開!

会期:平成30年6月9日から7月8日

写真:作品1
田渕俊夫《濃尾三川》1979年

平成30年度の第一弾となるこの常設展では、昨年度に新しく刈谷市美術館のコレクションに仲間入りした新所蔵作品を紹介しました。昨年度の作品収集活動では、当館の重要な収集方針である、近・現代の〈郷土の美術〉を中心に、〈戦後・現代の美術〉や絵本類の〈原画〉などを収集しました。

〈郷土の美術〉では、昨年企画展を開催した西尾市生まれの洋画家・斎藤吾朗の80、90年代の代表作と、刈谷を取材して描いた新作をはじめ、名古屋市生まれの大島哲以、愛知県立芸術大学で教えた田渕俊夫の作品を、〈戦後・現代の美術〉では、同じく昨年企画展を開催した篠原有司男の絵画・版画作品や、篠原の制作過程を撮影した藤倉明治の記録写真を収集し、1950年代末から活躍する前衛美術家の多彩な活動が展観できるコレクションとなりました。また、絵本作家としても活躍する田島征三や国画会を中心に活躍する大沼映夫の油彩画、三河地方の風物を捉えた北岡文雄の木版画集などを収集しました。

〈原画〉では、岡崎市生まれで地元ゆかりの作家ともいえる瀬川康男の試作絵本原画を収集し、さらに、戦後、豊田自動織機やトヨタ自動車の社長・会長を歴任した刈谷ゆかりの偉人・石田退三の美術コレクションより、和田英作が知立滞在時に描いた風景画などのご寄託を受け、ますます充実したコレクションへと発展しました。

この展覧会では、その中から選りすぐりの約30点を展示しました。

トヨモーター展 メイド・イン・刈谷のオートバイ物語

会期:平成30年7月21日から9月2日

チラシ:トヨモーター展

戦後間もない頃、刈谷駅の近くにあったオートバイメーカー、株式会社トヨモータース。1949(昭和24)年に設立し、自転車に取り付ける補助エンジン、バイクモーターの生産を開始しました。こうした原動機付自転車は、荷物の運搬や軽快な移動など、戦後の経済復興を支える便利な乗り物として広く活躍しました。まだ自動車が大衆に普及していなかった当時、オートバイが一大ブームを迎えます。

トヨモータースは、バイクモーターのほか、完成車として多様なモデルのオートバイを生産し、また、運搬に特化した三輪のオートバイも開発するなど、実用性を重視した製品づくりを特徴にする有力メーカーとして発展しました。その頃の中京地区には、小規模なものを含めると70社余りのオートバイメーカーが存在しましたが、短期間のうちに次々と淘汰されていき、1959(昭和34)年には、トヨモータースも幕を閉じることになりました。

この展覧会では、わずか10年の間に40種を超えるモデルで生産された《トヨモーター》の軌跡を、貴重な実車をはじめ、チラシやパンフレット、設計図、広報誌、当時の写真など、様々な資料を通してご紹介しました。また、同時代に名古屋近郊で製造されたオートバイのほか、公道で開催されたレースの様子など、活況を呈した当地域のオートバイ史も併せて概観し、《トヨモーター》誕生から70年が経とうとする現在、忘れられていく郷土の産業史を振り返りました。

図録「トヨモーター展」販売中

金魚絵師 深堀隆介展 平成しんちう屋

会期:平成30年9月15日から11月4日

チラシ:平成30年深堀隆介展

金魚の持つ神秘性に魅了され、創作を続ける深堀隆介(1973年愛知県名古屋市生まれ、横浜市在住)。深堀は透明樹脂にアクリル絵具で金魚を描くという独自の斬新な手法で注目を集める若手の現代美術家です。

極めて独創的な深堀の技法は、器の中に樹脂を流し込み、その表面にアクリル絵具で金魚を少しずつ部分的に描いていき、さらにその上から樹脂を重ねます。その作業を繰り返すことにより、絵が重なり合い、まるで生きているかのような金魚が表現され、圧倒的な立体感をもって観るものに迫ります。

その生き生きとしたリアリティは平面である絵画作品と立体作品の境界に揺さぶりをかける革命的絵画と言えるでしょう。こうした一連の金魚作品によって、国内はもとより今や世界的に高い評価を受けています。また、近年ではライブペインティングやインスタレーションにも力を入れ、ますます表現の幅を広げています。

この展覧会では、初期の立体作品から初公開となる新作インスタレーション《平成しんちう屋》を含む代表作約200点により、深堀隆介の世界をお楽しみいただきました。

「深堀隆介作品集 平成しんちう屋」は、一般の書店にて購入可能です。

  • 定価本体 2,700円(税別)
  • B5変型(192ページ)
  • 出版社 株式会社求龍堂(平成30年7月発売)
  • ISBN 978-4-7630-1816-8 C0071

常設展第2期 没後60年 河目悌二展 童画家・川上四郎とともに回顧する

会期:平成30年11月10日から12月9日

表紙:りょうかんさま『講談社の一年生文庫2』原画 1951年

刈谷市出身の童画家 河目悌二(1889年から1958年)と、河目と晩年まで親交を結んだ童画家 川上四郎(1889年から1983年)は、1913(大正2)年に美校を卒業後、河目は入隊、川上は教職に就きますが、やがて、美校の先輩である木元平太郎が社主のコドモ社に関わり、同社発行の『良友』や『童話』などの子どもに向けた雑誌の表紙や口絵を描く、看板画家としで活躍するようになります。

高い芸術性を目指した『赤い鳥』や『コドモノクニ』などが相次いで創刊された、大正期の児童文化を牽引する童画家として、数々の作品を生み出しました。

戦後も『観察絵本キンダーブック』などを舞台に描き、多くの雑誌や書籍で作品を発表しました。また、晩年はともに、越後生まれの江戸期の歌人、良寛(1757年から1831年)の天真爛漫、天衣無縫の人柄に魅かれ、その表現に精力的に取り組みました。

この展覧会では、ふたりが描いた『良寛さま』の原画をはじめ、ともに登場する『観察絵本キンダーブック』の原画を中心に紹介しました。
また、美術館隣の刈谷市中央図書館(2階展示コーナー)にて「『赤い鳥』と童画家たち展」を同時開催しました。【会期】10月27日から11月25日

画像=《りょうかんさま『講談社の一年生文庫2』原画(表紙)》1951年

常設展第3期 絵画を愉しむ 食の風景

会期:平成31年1月8日から2月17日

写真:作品2
上田 薫《スプーンのチェリー》1975年

この常設展では「食の風景」として、当館コレクションより「食」をテーマにした作品を厳選して紹介しました。

衣食住というように、生活の基本といえる「食」。多くの画家が、その身近な物(行為)をモチーフに作品を制作しています。岸田劉生は厳格な写実表現で、存在感や緊張感すら漂う林檎を描き、和田英作は写実を基本としながらも柔らかな色彩と筆遣いで、穏やかで優美な柿や玉葱を描いています。
また、上田薫は写真を投影しながら本物そっくりなチェリーを描き、迫力ある画面からは甘い香りがするようです。比べてみると、同じ「写実的」な表現であっても、その表現方法が多様であることが分かります。
さらに、宮脇晴の描いた和やかな朝食の様子と、その対極のような井上洋介のギョッとする食事風景といったように、ひとくちに「食」といっても画家のモチーフに対する想いもさまざまだと気付かされるでしょう。

この展覧会では、12人の画家の絵筆で料理された「食」にまつわる創作世界をお楽しみいただきました。

常設展第4期 絵画を愉しむ 描かれた人びと

会期:平成31年2月21日から4月7日

写真:作品3
鬼頭鍋三郎《舞姿》1981年

この常設展では、前回に引き続き「絵画を愉しむ」として、絵画作品の魅力に多面的に迫るテーマ展を開催しました。今回は「描かれた人びと」として、当館コレクションの中から人物が描かれた絵画作品を厳選し、その表現の多様性や魅力を紹介しました。

もっとも身近な存在といえる「人」。自画像をはじめ、家族やモデル、想像上の人物など、「人」は古くから多くの画家によって描き続けられ、美術の重要なテーマとなってきました。私たちはそれらの作品をじっくり鑑賞することで、画家の対象への気持ちや、作品に込めた想いを受け取ることができます。
気迫に満ちた自画像からは画家の生々しい感情が、妻や子どもを描いた作品からは愛情やぬくもりが溢れています。また、異国での作品からは、異文化に対する憧れやその土地の空気が漂い、恐ろしい怪人のような空想上の人物からは、画家のモチーフに対する愛憎を感じることもあります。

そして、そのような「人」が描かれた多彩な作品を鑑賞するなかで、自分自身を見つめ直したり、身近な人を想ったり、忘れかけた人を思い出すかもしれません。

この展覧会では、「人」とは何かと考えるきっかけづくりとして楽しみいただきました。

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

美術館
〒448-0852
刈谷市住吉町4丁目5番地
電話:0566-23-1636 ファクス:0566-26-0511
美術館へのお問い合わせは専用フォームをご利用ください。

より良いウェブサイトにするために、ページのご感想をお聞かせください。

ページ内容改善の参考とするためにご意見をいただいています。

このページの内容は分かりやすかったですか?